キケロ作『老後の幸福について』
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キケロ作『老年について』

第一章 大カトーが語る老後の楽しさ

「ティトゥス殿、私があなたをお助けして、いまあなたを悩ましている御心労からお救いすれば、どんな御褒美がいただけますか。」

かの英雄ティトゥス・フラミニヌス将軍(=前197年マケドニアのフィリップ五世を破った)に向かって「たいした富はないが純朴さにみちたギリシアの羊飼い」(=将軍に敵の背後の裏山への間道を教えてローマ軍のマケドニア戦勝利のきっかけを与えた)が話しかけたのと同じ言葉で、ティトゥス・アッティクス君、僕は君に話しかけさせてもらおう。もっとも、君がフラミニヌス将軍のような心労に悩まされていないのは僕も知っている。

なぜなら、僕は君の沈着冷静ぶりをよく知っているからだ。君がアテナイから「アッティカの」というあだ名だけでなく、教養と知識を持ち帰ったことは僕も理解している。もっとも、時には君も僕と同じことに多少は心を乱されているかもしれないが、それに対する慰めはもっと大きな仕事なので、別の機会に譲ろう。いまは君のために老後について何か書くことにした。1

僕は僕たち二人に共通するこの重荷、差し迫ってはいなくても確実にやってくる老いの重荷から君と僕自身を解放したいのだ。もっとも、君は何につけてもそうだが、この重荷にもほどよく賢明に耐えているし、これからもきっと耐えていくだろう。だが、僕は老後について何か書きたいと思ったとき、僕の脳裏に浮かんだのは君のことだ。この本は君に贈るのに相応しいものだし、僕たち二人が一緒に利用できるからだ。この本を書くのはとても楽しかった。おかげで老後の煩わしさを取り去ることができたし、老後を快く楽しいものにできたからだ。2

哲学に従って生きていれば一生悩みなしに過ごせるのだから、哲学のことはどれだけ褒めても褒め足りない。僕は哲学については沢山書いてきたしこれからも書くつもりだが、君のために書いたこの本は老後についてのものだ。ケオスのアリストンの『老後論』の話し手はオーロラから不死の生を得たティトノスだったが、僕は老いた大カトーにする(神話は信憑性がないからね)。彼の話しなら信憑性がある。カトーが老後を楽しく送っているのを不思議に思っているラエリウスと小スキピオが、カトーの家で質問してカトーがそれに答える形にした。彼の言うことが彼の書いた本よりも博識に見えたら、それは彼が老後になってから熱心に勉強したギリシア文学のおかげだと思って欲しい。しかし、これ以上何を言う必要があるだろうか。カトー本人の言葉が老後に対する私の考えを説明してくれるのだから(=想定されている時代はカトーの死の前年の前150年、カトー84才、スキピオ35才、ラエリウス36才のときである)。3

第二章 長生きして不満を言う矛盾

スキピオ「マルクス・カトーよ、あなたのすぐれた英知には多くのことでいつも感心していますが、特にあなたが少しも老いを負担にしていない事にはいつも驚いています。多くの老人たちは老後は嫌なもの


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