キケロ『カエリウス弁護』

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ツイートキケロ『カエリウス弁護』(前56年)

ローマの詩人カトゥルスの詩に出てくるレスビアのモデルになった女性が美男の男にふられた腹いせに男に毒殺されかけたと訴えた裁判で弁護に立ったキケロが被告カエリウスを救う。


第一章
陪審員の皆さん、もし皆さんの中で、法律のことも裁判のことも我々の慣例のこともよくご存じない方がおられましたら、今日は祭日でお祭りの最中で役所は全部お休みだというのに、この裁判だけが行われているのを見て、いったいどんな凶悪事件の裁判なのかと、きっと驚いておられることでしょう。そして、きっと放置していると国家の存立が危うくなるような重罪人が告発されていると思うことでしょう。武装して元老院を占拠したり、政治家を襲撃したり、国家に反逆して治安を乱す凶悪犯については、いつでも審理すべしと命ずる法律があるとお聞きになれば、そんな法律はおかしいと思うのではなく、この裁判でどんな犯罪が裁かれるのかを聞きたいと思うことでしょう。

そして、この裁判では何の犯罪も何の悪質な行為も何の暴力も裁かれることなく、訴えられているのは有能で勤勉で人々に好かれている一人の若者(=カエリウス)で、しかも彼を告訴したのは彼が一度法廷に召喚してまた召喚しようとしている人間の息子で、おまけに裁判費用は娼婦が出していると聞いたら、告発者(=アトラティヌス)の親孝行をとがめようとはせずとも、女の気まぐれには困ったものだ、公の休日にのんびりさせてもらえないとは陪審員団は何とご苦労なな事だと思うことでしょう。1

陪審員の皆さん、もしあなた達がよく注意してこの事件の全貌をつかむ気持ちになれば、自分の意志で行動する人なら、こんな告発などしなかったはずだと思われることでしょうし、とんでもない気まぐれとひどい憎しみを抱いている誰かの思い込みがあるだけで、何の見込みもなしにこんなことをしたと思われることでしょう。しかし、私はアトラティヌス君のことはよく知っていますし、彼は好青年で実にいい人間なのですから大目に見てやりましょう。若さのためか親のためかあるいは無理強いされてやっているという事情がありますから。彼がもし自分の意志で告発するつもりだったのなら、親孝行な青年だと思いますし、人に無理強いされてのことなら、仕方がないと思いますし、何かを期待してのことだったら、その子供っぽさを許しもしましょう。しかし、ほかの連中のことは大目に見ることは出来ません。彼らとは厳しく争わねばなりません。2

第二章
陪審員の皆さん、マルクス・カエリウス君というこの若者を私が弁護するにあたっては、何よりも告発者たちがこの青年の評判を損ない、名誉を傷つけようとして言ったことに答えることから始めるべきでしょう。彼の父親は冴えない人物で息子からも大切にされていないと色々悪口が言われています。しかし父マルクス・カエリウス氏が立派な人物であることは、私が弁護するまでもなく、また本人が何かを言うまでもなく、彼の知人やご老人たちには明らかなことです。

しかし、彼は高齢のために今では政治の世界から遠ざかっておられるので、


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